第3課 身ぶり - で伝える言葉 -
熊倉 千之(くまくら、・ちゆき)
体全体やその一部を動かして,自分の気持ちや考えを表すことを「身ぶり]といいます。
話をしているときに,喜びや悲しみや怒りなどの感情は,目や顔に表れますし,手や足の動きなどによっても強調することができます。身ぶりを交ぜることで,口にしている言葉の意味をいっそうはっきり伝えることができます。
しかし,それだけではありません。身ぶりは,普通の言葉の代わりとして,それだけで用いることができます。「嫌だ」というときに「首を横に振る]とか,「静かにしなさい」という代わりに「人さし指を縦に口に当てる」のはその例です。
また,身ぶりによって,口では表しにくい気持ちを伝えることもあります。例えば,特定の人に何かの合図を送りたいときに「片目をつぶる」とか,「失敗して恥ずかしい・申し訳ない」という気持ちを表すときに「頭をかく」のがそれです。
世界中のだれにも分かる身ぶりは,人さし指と中指を立てて表す「Vサイン」でしょう。この「勝利の合図」は,テレビのスポーツ番組などでよく見られます。上に挙げた「静かに」という身ぶりもどこの国でも通じるでしょう。
けれども,同じ身ぶりでも,国や民族によって意味が違う場合があります。例えば,「親指を立てる」のは,多くの国で`は「オーケー(OK)」「よい」「最高だ」という意味を表しますが,日本では「男」「彼」「父親」などを表します。息子が友人に親指を立てて「これに,どなられた」と言えば,「父親に大きな声でしかられた」ということです。また,「親指と人さし指で耳たぶをつまむ」のは,ほとんどのアジア諸国やアメリカ合衆国などでは「よく聞きなさい」とか,あるいは「聞こえない」など,聞くことに関係のある身ぶりですが,日本や韓国では,熱い物に触れたときに指を早く冷やそうとする動作です。
また,同じことを表すのに、違う身ぶりで示す場合もあります。「わたし・自分]を示すのに、親指で胸を指したり,てのひらを胸に当てたりするのは国際的な身ぶりですが、日本人は人さし指で自分の鼻を指します。日本人が手を胸に当てるのは,「安心した」ということを表す場合です。
このように,身ぶりはとても変化に富んだおもしろい言葉です。それぞれの国の独特な身ぶりは,その国の演劇や舞踊の中にも取り入れられて,民族芸能の犬切な要素になっています。
○新出語句
(1)身ぶり 一部 喜び 悲しみ 怒り 感情
動き 強調 人さし指 特定 合図 片目
失敗 中指 Vサイン 勝利 民族親指 オーケー(OK)最高 父親 耳たぶ 諸国 関係 指 動作
手のひら 国際 変化 独特 演劇 舞踊 芸能/
木の葉 紅葉 両替 勤務地 以外 出張 ソファーロボット 室内競技場 コンサート・ホール 劇場 道路 らんぼう 舟 小銭 子犬 器 入場券 手ぶり 薬指
小指 入学 着陸 成功 ユーモア 冗談 ストーブ肩 腕 腹 尻 鼻先 両腕 熊倉千之 アジア アメリカ合衆国 韓国
(2)恥ずかしい
(3) 大げさな
(4)表れる 交ぜる 目にする 用いる (横に)振る
(口に)当てる つぶる (頭を)かく どなる つまむ
冷やす (変化に)富む 取り入れる /
積もる 目にする 耳にする 手にする はじく 折る
冷える (胸を)張る 感じる 絡む 広げる 向ける(肩を)すくめる
(5)いっそう ほとんど このように / どきどき
(6)~に関する / ~とともに
新出漢字
喜び 悲しみ 怒り 交ぜる 用いる 嫌
振る 当てる 片(目) 失敗 恥ずかしい 勝(利)
(番)組 息子 諸(国) 冷す (動)作 富む
(演)劇 舞踊 芸能/
木の葉 (紅)葉 出張 積もる 舟 小銭
器 入場券 折る 成功 冗談 張る
肩 腕 腹 腰 尻 絡ませる
練習
語句の使い方
1.~ことを~という
(1) 体全休やその一部を動かして,自分の気持ちや考えを表すことを「身ぶり」といいます。
(2) 秋になって,木の葉が赤くなることを「紅葉する」 といいます。
(3) 円をドルに替えたり,大きいお金を小さいお金に替えたりすることを「両替」 といいます。
(4) 仕事のために勤務地以外の所に行くことを「出張」 といいます。
2.~(を)~として(使う)
(1) 身ぶりは,普通の言葉の代わりとして,それだけで用いることができます。
(2) うちではソファーを子供のベッドとして使っています。
(3) 最近の工場では,ロボットが人間の代わりとして使われています。
(4) この室内競技場は, コンサートホールや劇場としても利用できます。
3.~(し)にくい
(1) 身ぶりによって,口では表しにくい気持ちを伝えることもあります。
(2) 雪が積もって,道路が歩きにくいです。
(3) 息子からの手紙はうれしいけれど,字がらんぼうで読みにくい。
(4) 部長には話しにくいので,課長に相談しました。
4. ~(する)のに
(1) 同じことを表すのに、違う身ぶりで示す場合もあります。
(2) 昔はこの川を渡るのに、舟を使っていました。
(3) 日本では、最近手紙を書くのに、ワープロを使う人が増えてきました。
(4) 小銭がないと、バスに乗るのに不便です。
5.それぞれ
(1) それぞれの国の独特な身ぶりは,その国の演劇や舞踊の中にも取り入れられています。
(2) 子犬のえさは,それぞれの器に入れてやったほうがいいでしょう。
(3) 兄も弟もそれぞれ仕事が忙しくて,なかなか会えません。
(4) 皆さん,入場券はそれぞれ自分で持って入ってください。
II 関連語句
1. 身ぶり
① 大げさな身ぶり 身ぶり手ぶりで表す
2.口にする
① 目にする 耳にする 手にする
3. 人さし指
① 親指 中指 薬指 小指
② 指で指す 指でつまむ 指ではじく 指を折る
4.失敗する
① 入学試験・着陸に失敗する
② 実験・離陸に成功する
5.通じる
① 言葉・日本語が通じる
ユーモア・冗談・気持ちが通じる
6.冷やす
① 水・氷で頭を冷やす
② ストーブで体を温める
③ 体・手足が冷える
7.胸
① 胸を張る 胸が痛む 胸がどきどきする
② 肩・腕・腹・背中・腰・尻が痛い
II.設間
1. 本文を読んで,次の問いに答えなさい。
(1)「身ぶリ」というのは、どういうことをいいますか。
(2)身ぶりを交ぜて話すのと,言葉だけで話すのとでは,どんな違いがありますか。
(3)身ぶりは,いつも言葉とともに用いられるのですか。
2.同じ身ぶりでも,国によって意味が違うということを感じたことがありますか。例を挙げて話しなさい。
3.次の身ぶりは,どんな意味を表していると思いますか。また,このような身ぶりは,あなたの国でも使われていますか。
(1) 親指と人さし指で鼻先をつまむ。
(2)自分と相手の小指を絡ませて振る。
(3)両腕を広げ、てのひらを上に向けて,肩をすくめる。
第3課 身ぶり - 体で伝える言葉 –
名前:____________________
練習問題 I
1. 次の下線の漢字の読み方を( )の中に平仮名で書きなさい。 (10×1=10)
(1)「Vサイン」は勝利( )の合図で,テレビのスポーツ番組 ( )などでよく見られる。
(2)身ぶりは、その国の演劇( )や舞踊( )の中にも取り入れられて,民族芸能( )の大切な要素になっている。
(3)部長は,来月アジア諸国( )に出張( )する予定だそうだ。
(4)最近、肩( )や腕( )や腰( )が痛いのは,なぜだろうか。 ,
2. 次の下線の平仮名を漢字に直して,〔 〕の中に書きなさい。(10×1=10)
(1)よろこ〔 〕びや,かな〔 〕しみの感情は目や顔に表れる
(2)身ぶりは,言葉の代わりとして,それだけでもち〔 〕いることができる。「いや〔 〕だ」というときに「首を横にふ〔 〕る」のは、その例である。
(3)「しっぱい〔 〕はせいこう〔 〕の母」というから,しっぱいしてもは〔 〕ずかしがることはない。
(4)彼はかため〔 〕をつぶって「じょうだん〔 〕だよ」と笑った。
3. 次の言葉の読み方を線の上に平仮名で書きなさい。(10×1=10)
(1) 交ぜる_______ (2)木の葉_______ (3) 作文_______
交通 _______ 紅葉________ 動作________
(4) 木の器________ (5) 父の怒り 父の________
食器 ________ 父に怒られる 父に________
練習問題II
1.次の文の○の中に適当な平仮名を書き入れなさい。(10×1=10)
(1)話をしているときに,身ぶり○交ぜること○,言葉の意味をいっそうはっ
きり伝えることができる。
(2)「首○横○振る」○○,「違う」とか「嫌だ」とかいう気持ちを表す身ぶりである。
(3)日本人○「自分」のことを示すの○,指○自分の鼻を指す。
(4)それぞれ○国の独特な身ぶりは,その国の演劇や舞踊の中○も取り入れら
れている。
2. 次の〔 〕の言葉を適当な形に変えて,( )の中に書きなさい。(5×2=10)
(1)身ぶりを使えば口では( )にくいことも伝えられる。〔言う〕
(2)ここは変化に( )すばらしいけしきですね。 〔富む〕
(3)両替を( )として銀行に行った。〔する〕
(4)父親から大声で( )夢を見た。〔どなる〕
(5)勝利の合図は人さし指と中指を( )表す。〔立てる〕
3. 次の言葉の内容を身ぶりで表すとき、どんな動作をするか,(例)のように( )の中に適当な動詞を書きなさい。(5×2=10)
(例)静かにしなさい。→ 人さし指を口に( 当てる )。
(1)特定の人に合図を送る。→ 片目を( )。
(2) 失敗した、恥ずかしい。→ 頭を ( )。
(3)オーケー,最高だ。 → 親指を( )
(4)よく聞きなさい。 → 耳たぶを( )。
(5)わたし,自分のこと。 → 手のひらを胸に( )。
4. (例)のように,自動詞・他動詞に注意して動詞を選び,線の上に書きなさい。(10X2=20)
自動詞 一 他動詞 | 自動詞 一 他動詞 |
増える 一 増やす 立つ 一 立てる 向く 一 向ける | 表れる 一 表す 冷える 一 冷やす 折る 一 折れる |
(例)このごろ若い客が 増えて いる。
店員をもっと 増やして ください。
(1)ドアの前に子供が_________________いる。
(2)ねこがしっぽを_________________ 歩いている。
(3)彼はカメラを子供たちに _________________ いる
(4)この部屋の窓は南を_________________ いる
(5)悲しみの感情が顔に _________________ いる
(6)自分の気持ちをはっきりと言葉に_________________伝えたい。
(7)氷で頭を _________________ いる。
(8)このビールはよく_________________いて,おいしい。
(9)子供が指を _________________ 数をかぞえている。
(10) 力を入れて書いたら、鉛筆が _________________しまった。
5. 次の(1)~(5)の各文の( )の中に,意味が通じる文になるように下の枠の中
から最も適当なものを選んで,その記号を書きなさい。(5×2=10)
a.腕を振って入場してきました。b.合図を送ることができます。c.通じないと思います。
d.鼻をつまんでいます。
e.どんどん取り入れています。
(1)その地方では、英語はほとんど( )
(2)子供たちは「くさい」と言って( )
(3)開会式で,選手たちは胸を張り,( )
(4)この工場では新しい技術を( )
(5)さまざまな音や光を用いて遠くに( )
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